原作=有吉佐和子 脚色=小幡欣治 演出=西川信廣
時は1963(昭和38)年、金融業者の武市浩蔵は妾駒代の家で急死する。報せを聞いて本妻の松子と浩蔵の妹タキが駆けつけた。お互い ‘カボチャ婆’ ‘電気クラゲ’ ‘キツネ’ と陰口をきいている三人の遭遇である。
四十九日も無事に済ませ松子は一安心するも、タキが兄の家に住むのは当然と押しかけてきた。さらには駒代も新橋の料理屋の普請が済むまで部屋を貸してほしいとこれまた居座ってしまう。
かくして本妻と妾と小姑、一筋縄では行かない三婆が一つ屋根の下に同居することになった……。
キャスト
武市松子 佐々木愛
武市タキ 有賀ひろみ
富田駒代 阿部敦子
瀬戸重助 佐藤哲也
お花(女中) 小林悠記子
辰夫(八百政店員) 筆内政敏
馬場(武市産業社員) 皆川和彦
田所( 〃 ) 斉藤直樹
重藤(葬儀屋) 沖永正志
森(葬儀屋) 早苗翔太郎
きよ子(神楽坂女中) 水原 葵
千石(運送屋) 田中孝征
丸島(運送屋) 斉藤直樹
お常(料理屋女中) 瀧澤まどか
田中(植木屋) 沖永正志
山田吾郎(サラリーマン) 岡田頼明
和子(山田吾郎の妻) 萩原佳央里
山川(老人ホーム係員) 姫地実加
常見(老人ホーム係員) 水原 葵
二上(区役所係員) 皆川和彦
正子(辰夫とお花の娘・8歳) かんね
スタッフ
原 作 有吉佐和子
脚 色 小幡欣治
演 出 西川信廣
美 術 小池れい
照 明 塚本 悟
衣 裳 岸井克己
音 響 齋藤美佐男
音 楽 上田 亨
舞台監督 鳴海宏明
制 作 中山博実
劇評 文化座『三婆』老人たちの気迫
鈴木太郎 |
「三婆」という題名も、いまどき、なにやら抗議されそうであるが、有吉佐和子の原作を小幡欽治が脚色して、東宝の芸術座で上演されたのが1973年(昭和48年)である。43年前になるから、その時代では許されたのであろう。文化座はそれから4年後の77年(昭和52年)に初演、そして11年後の88年(昭和63年)に再演された。今回の再々演は28年ぶりである。演出に西川信廣(文学座)を迎えての挑戦であった。
「三婆」というからには。登場人物もきっと個性的な三人に違いないし、それだけの俳優が揃わなくては成立しないと思っていたが、その通りであった。登場する人物は、金融業者の本妻・松子(62歳)、妾の駒代(58歳)、金融業者の妹・タキ(60歳)。それぞれの立場と言い一分があって、金融業者がなくなったあと、松子の家に住むようになる。さらに、会社の専務をしていた瀬戸重助(63歳)も身を寄せるようになる。
俳優陣も、松子・佐々木愛、駒代・阿部敦子、タキ・有賀ひろみ、重助・佐藤哲也という実力派が、実に見事なアンサンブルをつくりあげていた。老人たちの気迫に満ちた演技に、ときには笑い、ときには涙する、ときには喜びや悔しさなど、それらすべてを共有することができた。
同居した三人は、いがみ合い、いさかいを続ける。松子が家賃を請求すると、駒代とタキがタッグを組んだりもする。部屋を借りにきた若い夫婦から敷金などを受け取ってしまうタキもしたたかである。この場面での有賀ひとみの飄々とした姿か秀逸。また、松子の家の女中・お花(山崎麻里)と。八百政の店員・辰夫(筆内政敏)の若いカップルもなかなか手強いところを見せる。というのも、松子の養子になって財産を掴もうというのだ。しっかり者の典型でもあったようだ。
印象的な場面はいくつもあった。さすがに佐々木愛であると思ったのは、一幕の最後、松子が。着物をいくつも着て、子どものような無邪気な笑顔を見せたところ。そして、後半、三人がそれぞれに自活することになった夜、松子が寿司をご馳走するのだが。碓も一緒には食べようとはしない。松子は涙をうかべて鮨を一口食べる。そのシーンが良かった。なんともいえない哀愁か漂っていたからである。
「原作の底を流れる人生終末の無常観に肌寒い戦慄を、とても人ごとではないわいと呟いたりした」と小幡欽治は初演パンフレットに記している。それだけに、人間関係の面白さや、「三婆」が喜劇として成立していることに注目させられた。盆回しによる場面転換は効果的であり、上田亨の音楽は「昭和ロマン」の雰囲気を醸成していた。文化座の新たな財産として、ベテランと若手の俳優陣による上演か続くことを期待したい。(東京術劇場シアターウェスト/3月11日、初日所見)〈「潴」第41号2016・春〉より
1月30日(水) |
1月31日(木) |
2月5日(火) |
2月6日(水) |
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昼 |
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13:00 |
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13:00 |
夜 |
18:30 |
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18:30 |
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会場 |
安佐南区民文化センター |
アステールプラザ(大) |
希望日締め切り 12月10日(月) 座席シール発行 1月8日(火)
後援:広島市・広島市教育委員会