2020年4月例会



「ちと語ろうや」

構成・演出 関矢幸雄

 原作小説を手に取って最初のページを開いた時、私は衝撃を受けた。深沢七郎氏作曲による「楢山節」の楽譜が載っていたからである。

 深沢氏の文章は音楽的であり、その文章の向こう側に、生き物の匂いや風や水の音を感じることができる。私は、この小説を芝居にしたい、と思った。

数年後。仲間とともに、原作の使用許可を求めに、深沢氏を訪ねた。

 


 最初はけんもほろろ。この小説を芝居にしたい、と申し出た私に深沢氏は一言「およしなせえ」と言った。仲間の熊谷章君が勇気を出して、楢山節を聞かせてください、とお願いした。深沢氏はギターを抱え弾き語りで唄ってくれた。だが、その唄はテンポが速く、演奏もやや乱雑で、私の想像していたものとは違っていた。今度は私が「芝居では民謡のように楢山節を唄ってみたいと思っています」と告げ、熊谷君に楢山節を歌うように促した。熊谷君は民謡の名手だったのである。朗々とのびやかに歌い上げる熊谷君の楢山節を食い入るように聞き入っていた深沢氏は、終わったとたん「いいねえ。一緒に旅を回りたいねえ」と言った。

 最初は、児童劇の仲間とこの芝居を作った。役者たちはみな面白がったが、劇団制作部が「これは子供の芝居じゃない」といった。

 やがて、劇団ひまわりの青年部が上演したいと言ってきた。劇団ひまわりの公演は全国を回り、二十年近く再演を重ねた。

 さて、今度は劇団1980での上演である。

 1980は、私の演出作品「素劇 あゝ東京行進曲」を二十三年間、上演し続けている。メイク・衣装・舞台装置を使わず、黒箱と白い紐だけで世界を描き出す「素劇」という表現の経験者たちだ。

 だが、気を引き締めて取り掛からねばならない。まったく新たな挑戦になるはずだからだ。

 結末の厳しさからだろう、この物語は「暗く悲しい物語」という印象を持たれている方が大多数である。だが、よくよく読み直してみると、貧しさゆえに厳しい掟とともに生きていかなければならない村人たちの、その暮らしの中には、生き物としての息吹が生き生きと息づいている。その大切な一面を、私たちは見落としてきたのではないか…?

 今、時代は厳しさを増している。

 この時代を覆っている「恨み・憎しみ」の連鎖をほどくには、互いを発見し合う、生かし合うことが最も大切なことだと思う。

 私の出身地である新潟では、子供同士「遊ぼうよ」と呼びかける時に「ちと語ろうや」と言っていた。

 

 小さな劇場の小さな芝居だが、『素劇 楢山節考』を見ていただいた方たちと「ちと語ろうや」と呼びかけ合うことができたら、と思うのである。

  あらすじ

 山と山が連なって、どこまでも山ばかりである。

 その山々の間にある小さな村。この村では70歳になると〝楢山まいり〟にいかなければならない。食い扶持を増やさぬために、年寄りは神さまの住む楢山に入り自ら死を迎えるのである。

 

 〽楢山祭りが三度来りゃよ 栗の種から花が咲く

 

 村人が歌う唄が、楢山まいりが近づいたことを知らせる。

 

 今年69歳になったおりんは、山へ行くための支度も万端整え、ひとり息子の辰平が、早くそのことを言い出さないかと心待ちの日々。楢山に行けば、先祖や母や姑が神さまになって迎えてくれると、おりんは信じているからである。

 心配の種だった辰平の後妻も迎えることができ、あとは、この齢になって一本も抜けていない歯をなんとかすること。ぎっしり揃っている歯は、いかにも食い意地がはっているようで、食料の乏しいこの村では恥ずかしいことなのだ。おりんは、歯の抜けたきれいな年寄りになって行きたかったのである。おりんは火打ち石で叩いて自分の前歯を打ち壊そうとする毎日……

 

 楢山祭りもおわり、短い夏が去り、秋が過ぎる。

 孫のけさ吉が嫁をとり、一家がまたひとり増えた。隣家に忍び込んで食い物を盗み出し、袋叩きにされた一家があった。楢山まいりを拒んで、息子に縛られたものがいた。

 

 あと数日で正月を迎える日の深夜、おりんは辰平が担ぐ背板に乗り、楢山まいりの作法どおり誰にも見られぬように、山に向かうのだった――

  原 作 ……… 深沢 七郎

  構成・演出 …  関矢 幸雄

  演出助手 …… 河本 瑞貴

  美 術 ……… 山本 降世

  音 響 ……… 齋藤 美佐男

  照 明 ……… 増子 顕一

  衣 裳 ……… 上野 裕子

  舞台監督 …… 泉 泰至

  歌唱指導 …… 平岩 佐和子


「楢山節考」主な登場人物

おりん…50年前、向こう村から嫁いでくる。

   亭主は20年前に死亡。

   家の前に大きなケヤキの切り株が

   あることから「根っこ」と呼ばれる。69

辰平……おりんの一人息子。

    去年先妻が死に寡夫に。45

けさ吉…おりんの孫。辰平の子。

    4兄妹の長男16

とよ……おりんの孫。辰平の子。4兄妹の二男

かね……おりんの孫。辰平の子。4兄妹の三男

すえ……おりんの孫。辰平の子。4兄妹の末っ子

又やん…おりんの隣家「銭屋」の年寄り。70

又やんの倖…

    楢山に行かない父親に業を煮やす

玉やん…向こう村からやって来る辰平の後妻。

    45

松やん…村の娘。けさ吉の嫁となる

飛脚……向こう村からの使い。実は玉やんの兄

雨屋……12人家族。

    「雨屋」は、先代も楢山様に参っている

 

照やん…村の世話役的存在。

    「短気」の照やんと呼ばれる


 

 

 

安佐南市民劇場

 

広島市民劇場

会場

日程 

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安佐南区民文化センター

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アステールプラザ(中)

47()

48()

 

413()

414()

415()

 

13:00

 

13:00

1300

 

18:30

 

18:30

希望日締切 2月27日(木)  座席シール発行 3月18日(水)

 

後援:広島市・広島市教育委員会