作/詩森ろば 演出/青木豪
おとうふとコーヒーは認知症に効くって本当・・・?
とある地域の特養ホーム。その成り立ちも、あり方もユニークなこのホームでは、今夜ひとりの老人が最後のときを迎えようとしている。静かな看取りの夜になるはずだったその日、大きな台風が訪れ、橋の冠水により、ホームは孤立無援となる・・・。
永谷ふみ子
谷田川さほ
金山泰司
名取幸政
(青年座)
辻誠二
植木圭
旗本良一
井上太
石塚太郎
久保田勝彦
田上和代
栗木純
戸部市子
竹内奈緒子
真柴花恵
宮﨑愛美
永谷瑞樹
齋藤千裕
宮田希美
早坂聡美
加後純也
大竹直哉
会場 日程 |
|
安佐南市民劇場 |
|
広島市民劇場 |
||
_ |
安佐南区民文化センター_ |
|
アステールプラザ(大) |
|||
|
10月5日(水) |
10月6日(木) |
|
10月7日(金) |
10月8日(土) |
|
昼 |
|
- |
13:00 |
|
- |
14:00 |
夜 |
|
18:30 |
- |
|
18:30 |
- |
希望日締切 8月26日(金) 座席シール発行 9月14日(水)
詩森ろば(しもり ろば)
この公演の取材のために岡山と鳥取の県境にある、奈義町というところに行きました。
そこは、福祉を大切にして町を活性化させようと取り組んでいる町で、特に子育て支援が充実しており、合計特殊出生率(一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均)が全国でもトップクラスです。
奈義町は、限界集落と言われる自治体と交通の条件などはそんなに変わらないように見受けられます。ユニクロもTUTAYAももちろんありません。しかし、子育てに対して手厚く補助を出した結果、奈義で育った女性が、子育てをするなら奈義で、と言って、お連れ合いといっしょに戻ってくることが多いのだそうです。
そんな奈義町は、当然老人福祉にも力を入れています。在宅看取り率が県でいちばんです。だからと言って、家族に押し付けるようなものではなく、行政がしっかり支援しているからこその、数字なのだといいます。
介護士さんたちに移住を働きかけるプロジェクトなどもやっています。あなたがくれば作業所を作って雇用を作るからぜひ奈義町へ移住していらっしゃい、なんてことまで前提においたプロジェクトです。そこでは、演劇を使って認知症の世界を体感するワークショップや、介護のカリスマといわれる三好先生のセミナーがあります。最後に磯崎新さんが設計した素晴らしい現代美術館を見学する頃には、奈義町の魅力にみんながノックアウトされているのです。わたしも取材はしてみたものの、こんな理想的ではなんの参考にもならないよ、と愚痴りつつ、帰って来てから、子育てを東京ではしたくない、という若いお友達に、本気でそう思ってるなら奈義町がいいよ、と熱弁をふるったりしたものです。とはいえ、そのツアー.はわたし以外すべて福祉従事者の方々で、奈義町と自分の環境の落差など、お聞きしたことすべて、この作品のどこかに活かされていると思います。
ひとはいちどしか死にません。それはいちどは必ず死ぬということでもあります。
奈義町のようなところで生きて死ねたらそれはとても素晴らしいことだな、と思いますが、奈義町以外にも、命を終うことに、丁寧に手を携えてくれる場所はたくさんとは言えないかもしれませんが、ちゃんとあります。ホスピスという考え方、在宅看護。取材していくなかで巡り会ったいくつかの特別養護老人ホームも、人生の終い方に対しての哲学をしっかり持って運営されていました。舞台となった「おさんぽ」は、そんなレジェンド的な特養ほどには、完成された場所ではありません。理想をそこに見据えながらも、ままならない現実との板挟みもあり、なにより自分たちの未熟さもあり、それと戦いつつ、先を目指している。そんな施設です。これは、そんな「おさんぽ」がさらにステキな場所に変わっていくターニングポイントとなりそうなある台風の夜のお話です。
この会場にも、介護をお仕事にしている方や、親御さんの介護をしている方がたくさんいらっしゃることと思います。その日々に届く作品になったならこれほど嬉しいことはありません。もちろん介護などというものにまったく触ったことのないひとにも響く作品となれば嬉しく思います。(初演、劇団パンフレットより転載)
後援:広島市・広島市教育委員会